事業成果報告書

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地域資源と健康をマネジメントする「食のソムリエ」育成事業成果報告書PDFダウンロード

地域資源と健康をマネジメントする「食のソムリエ」育成事業

本事業の概要

(詳細は事業成果報告書 4~6ページを参照)

事業の目的

本事業の目的は、「食」を通じて地域課題の解決に貢献し、地域産業創生の役割を担う人材を養成するための、新たな教育カリキュラムを開発することにある。
そのために、栄養士、調理師といった、人々の食生活に第一線でかかわる職業人が、地域の特性や実状、課題をとらえる視点を持ち、それに応えるスキルを備え、さらにそれらを地域産業へと発展させる総合力を身につけることのできるプログラムが必要となる。

本事業では、主に、多くの地域で共通の課題となり得る「地域の食資源をどう活かすか」「地域の人々の健康づくりをどう推進するか」というテーマに対して、地域の実状に合わせたマネジメントができる人材を「食のソムリエ」と呼称し、「食のソムリエ」を育成するカリキュラムの提案、実証、普及を目指すこととした。

当該教育カリキュラム・プログラムが必要な背景

背景は、地域、時代、世相が変わると課題個々の内容は変化すると思われるが、専門性を活かした地域との向き合い方、課題への対応の仕方を学ぶカリキュラムを策定することで、変容する課題に柔軟に対応できる汎用性の高いプログラムの実現が可能となる。

地域の食料資源

茨城県は全国屈指の農業県であり、水産業も盛んで、豊かな自然と食料資源に恵まれた地域である。
県内全域を眺めてみても、県内各地域に食文化圏を形成し、豊かな特産食品を挙げればきりがない。
風土、特産、県民性などによって形成された食文化は、まぎれもなくその地域の食資源であるが、茨城県または各市町村が、町おこしや地方創生を企図したときに、この全国に誇れる食資源を活用することは外すことのできないテーマとなる。

各地でのさまざまな試みがニュースやトピックスとして扱われることも少なくないが、県別魅力度ランキングなどに示唆されるように、地域に潜在する魅力や豊かさが充分に活かされ認知されているとは言い難い。

地域の健康課題

一方、今や国民的課題でもある食と健康の問題では、とりわけ罹患率の高い生活習慣病への取り組みが重要となっている。
茨城県においては、これまでも食育等を通じたバランスの良い食生活の創出について、官民あげて取り組んできているが、例えば平成28年に実施された国民健康・栄養調査では、肥満の割合、塩分の摂取量共に全国平均を上回り、野菜の摂取量は厚生労働省が目標に掲げる350gには程遠い数値となっている。

これらの課題解決のためには、国や自治体の施策、管理栄養士、栄養士のさまざまな場面での栄養指導の必要性は言うまでもないが、地域住民の食生活に直接かかわる飲食産業に従事する調理従事者や菓子製造従事者の、「健康」に対する意識やアプローチが変わることで、日々の暮らしの中で、おいしく、楽しく、食生活を改善して行ける可能性が生まれる。

情報の活用と情報発信

あふれる情報の中から、いかに不確かな情報に惑わされることなく必要な情報にたどり着けるか、インターネット等を通じて、適切かつ積極的に情報発信をしていけるかなど、情報社会とうまく付き合い利用していくことは、食の世界においても必要不可欠な要素となってきている。

これらの課題と向き合い地域の活性化を実現していくことで、栄養士や調理師などの知識や技能を持った専門職従事者は、自身の職業能力を高め、活躍の場をさらに広げることができると考える。

開発プログラムのターゲット

本事業では、調理師養成課程の在学生向けに展開する授業にふさわしいカリキュラムとして、科目群、学習形態を開発した。

また、将来的には、調理師だけでなく、栄養士、製菓衛生師など、食関連の資格取得を目指す大学生、専門学校生、および学び直しを必要とする飲食業従事者、あるいは食を通じて社会貢献を考える社会人等に対し、本プログラムが有効に活用されることが想定できる。  
そのため、他養成課程に在籍する学生や、現在就業中の社会人の学習にも対応するプログラムに発展させることを展望し、eラーニングプラットフォームの構築にも着手した。

開発プログラムのターゲット

事業の目的である「食のソムリエ」育成プログラムの開発に当たり、主に以下の取り組みを通してカリキュラムの作成、実証、検証、修正を進めた。

事業の実施体制

事業の実施体制

「食のソムリエ」育成プログラム

(詳細は事業成果報告書 7~29ページを参照)

食のソムリエとは

定義

「食のソムリエ」とは、その土地の自然が作り出す素材の良さを知り、健康で楽しい食のスタイルを提案できるスキルと資質を持った人材である。
その社会的な役割は、多くの地域の共通課題である「地域の食資源をどう生かすか」「地域の人々の健康づくりをどう推進するか」というテーマに対して、地域の実情に合わせたマネジメントを通して、これから先の持続可能な地域社会を実現することである。

食のソムリエの称号

「食のソムリエ」の称号は、以下のいずれかの者で、かつ本プログラムの主旨を理解し、すべての科目を履修した者に、付与することを想定している。

  1. 栄養士、調理師、製菓衛生師等食分野の国家資格を有しているか、または資格取得を目指し養成施設で学んでいる大学生、専門学校生。
  2. 学校、高齢者施設の給食業務、またはレストラン、ホテル等の飲食業従事者。
  3. 食材のキュレーション及び食の流通にかかわる業務に従事する者。
  4. 地域の食育や食生活改善にかかわる活動の推進者。
「食のソムリエ」育成プログラムの活用

本プログラムは、専修学校の調理師養成施設の教育課程を構成するカリキュラム科目として履修されることを想定しているが、他にも以下の各場面で、目的に合わせ、本プログラムで設定したカリキュラムのすべて、または一部が活用されることを期待する。

  1. 食分野を専攻する大学生または専修学校生の履修科目
  2. 広く飲食業界や関連する業界で働く社会人の学び直しの機会
  3. 地域の食育や食生活改善にかかわる活動
  4. 地域の活性化や産業創生に向けての学習
  5. 地域や食について見識を深めるための生涯学習
「食のソムリエ」育成プログラムで育まれる能力

本プログラムで設定するカリキュラムを履修することで、以下の能力が育成される。

  1. 現代の健康問題を理解し、食を通じて地域の健康課題解決のための提案ができる。
  2. 食と風土のかかわりを理解し、地域の食資源に関する知識をもつ。
  3. 地域社会のニーズや地域の文化資源に根差した、新しいレシピや商品開発ができる。
  4. 地域の食にかかわる情報を共有し、積極的に情報を発信するスキルが身につく。
  5. 地域の食文化環境向上に資する活動ができる。

食のソムリエ育成カリキュラムの特徴

カリキュラムの目的

本カリキュラムでは、地域の特性や実状、課題をとらえ、それに応えることが出来、さらにそれを地域産業へと発展させるための総合力を養うことを目的とする。これにより、「食」を通じて地域の課題解決に貢献し、地域産業創生の役割を担う人材を育成することを目指す。
また、調理師養成施設においては、既存のカリキュラムと連動させることによりさらに教育効果をあげることが期待される。

カリキュラムの構成

「地域健康」「地域食資源」「地域と情報」の3分野で構成する。

  1. 地域健康分野
    地方自治体が地域ぐるみで住民の食習慣を改善し、生活習慣を予防する動きが広がってきている。
    生活者一人ひとりの食生活の改善を通して健康寿命を延ばし、豊かな暮らしを営むことは、地域社会における重要な政策課題になっている。
    また、健康には生活習慣のみならず、地域の絆やつながりにも影響を及ぼすと言われ、地域と人とのつながりを作ることが重要とされる。
    こうした背景をうけて、地域健康分野では、自分の住む地域や職場のある地域の健康問題についての基礎的な知識、その問題を解決するための手法を学習する。
  2. 地域食資源分野
    食は文化としてその地域の姿を集約した存在でもある。
    言い替えれば、地域独自の食は、その地域のアイデンティティを体現したアイテムにもなると言える。
    そのため、地域の人は親しみを持ちやすく、地域外の人は異文化として興味・関心を持って捉える対象となると言える。
    このように地域における食資源は、様々な点で優位性があると考えられ、地域をブランド化するうえで効率性や効果を高めることができる。
    こうしたことから地域食資源分野では、地域の風土を活かした多様な食のスタイルとそれにかかわる農や企業の関りを学びながら、食のソムリエに必要とされる食材を目利きして、それを活用するスキルを学習する。
  3. 地域と情報分野
    食のマーケティングやマネジメントの基礎的な素養を習得することで、地域健康分野、地域食資源分野において学習したものを、実社会で活用することや新たな産業の創造へとつなげることを目指す。
    また、地域づくりの方法論や、五感を通して食を楽しむ環境づくりなどについて、さまざまな視点から地域と関連づけて学習する。
    さらに、情報の収集と発信の基本スキルを身に付け、多様な地域ステークホルダーと協働し地域産業の発展に貢献する活動を行うための学習として、地域資源を生かした地域の活性化についての実情と課題を学び、ビジネスに結び付けた成功例から地域の魅力を効果的に広める方法などについて理解を深める。

カリキュラム構成図

当学で実施している既存カリキュラムへの展開

本事業で開発した食のソムリエ育成カリキュラムの3分野5科目については、1年次の基本的な教育内容をふまえて、2年次に履修することが望ましい。当学では、2年次の教育課程の中で、「シミュレーション実習」の一部分に組み込むことで効果的な学習が得られると考えている。

キャリアフレームワーク、アセスメントツール

キャリアフレームワーク
ルーブリック方式の採用

「食のソムリエ」育成カリキュラムにおいて、学習成果を体系的かつ総合的に評価するためにキャリアフレームワークを開発した。
地域における健康や食資源などの課題解決能力を身につけ、さらに地域の実情に合わせてマネジメントができる人材育成を目的とする当プログラムにおいては、パフォーマンス評価を通じて思考力、判断力、表現力等を評価することに適している『ルーブリック』の考え方を適用し、育成する資質や能力について自己アセスメントを兼ねる方式が有効的であると考えた。

キャリアフレームワーク

「食のソムリエ」育成カリキュラムで設定する3分野について、学習目標をもとに評価項目と学修成果評価指標を設定しキャリアフレームワークを作成した。

自己評価シート

学生が自らの学習到達状況を振り返り確認することを目的として、キャリアフレームワークに基づいた自己評価シートを作成した。

キャリアアセスメントツールの開発
開発概要

学修目標の達成度を測るツールとしてキャリアアセスメントテストの開発を行った。
「食のソムリエ」育成カリキュラムは、調理や栄養に対する知識・技能を有している者が地域の課題解決に資する能力を学ぶ応用的な講座であることから、学習ターゲットとなる調理師養成課程の在学生はもちろん、今後の展開として社会人を対象にしたリカレント教育の機会においても効果的に活用できるよう基礎的な段階から枠組みを構成し、キャリア形成度合いを測定することを狙った。

キャリアアセスメント全体概念図

主な学習対象となる調理師養成課程の在校生が習得する、基本となる内容を「ベーシック」として設定した。
次に調理師、栄養士、管理栄養士など、食関連の資格取得者に対する発展的な内容を「スタンダード」とし、最後に本事業において開発するプログラムを「アドバンス」として設定した。
キャリアアセスメント全体図

キャリアアセスメントテスト

全体概念図で示した3つの学習段階について、アセスメントテストを合計300問作成した。
問題作成は、今後の展開として企図しているeラーニングでの教育にも活用できるよう、四肢択一式を取り入れた。

会議体の運営

(詳細は事業成果報告書 30~43ページを参照)

会議の運営

最終年度は、目的に沿った効果的なカリキュラム開発の完了を目指し、高い成果を得られるよう、目的別の会議体においてカリキュラムや事業に対する評価・検証を行った。
会議体の構成委員には引き続き学識経験者、連携する自治体、民間企業、有識者をメンバーとして構成し、今年度もカリキュラム開発会義、プログラム開発分科会並びにプログラム検証分科会を開催した。

カリキュラム開発会議(年2回)

プログラム全体についての課題抽出等総合的な検討の実施
1.主催者挨拶 2.出席者自己紹介 3.事業概要の説明 4.進捗状況報告 5.意見交換

プログラム開発分科会(年1回)

カリキュラムの構成、内容等についての助言等
1.主催者挨拶 2.出席者自己紹介 3.事業概要の説明 4.進捗状況報告 5.意見交換

プログラム検証分科会(年1回)

カリキュラム案の施行、プログラムの実行性についての助言等
1.事業概要および事業の進捗状況 2.事業実施報告 3.意見交換

基礎調査を終えて

(詳細は事業成果報告書 44~52ページを参照)

ヒアリングによる地域ニーズの把握

対象をどのように絞るかで得られる回答が変わってくるため、慎重に対象設定を行った。
ヒアリングを通して、食に携わる者への期待度の高さを感じ、人材養成の責務と求められる能力について改めて認識させられる結果となった。

アンケートによる企業・団体の教育ニーズ把握

食分野に従事する者に求められる能力について、現場で働く人の率直な意見を、教育科目に結び付けて問うことができ大きな収穫であった。
新しく開発を試みる科目への期待度だけはではなく、既存科目の習得によって身につく能力について得られた回答も興味深い。
ただし、アンケート上では現在必要と認識されていない能力にこそ、これからの地域課題解決に繋がる糸口となる可能性がある場合もあり、そうした潜在的ニーズを見極め、明らかに必要と認識されている顕在的ニーズへも積極的に応えていくことが重要であるといえる。

アンケートによる茨城県の住民を対象とした食に関するニーズの把握

茨城県全体では、外食・中食よりも内食・自身で調理の傾向が強く、疾病のある者は、調理の際に栄養バランスを意識する人が多く見られ、食と健康は切り離せないものという事がわかった。
茨城県産食材についての関心も高く、食の地域資源について学ぶ必要性も考えられる。

アンケートによる関東圏内で調理関連の業務に携わる者を対象とした教育プログラムに関するニーズの把握

広く食分野に従事する者に求められる能力について回答を得たが、今年度は条件や対象を変え、地域住民(エンドユーザー)が食に対して何を求めているか、調理従事者(受講候補者)が本事業で提案する学習内容を学びたいと思うかどうかなどの具体的な設問に対して回答を得たことで、カリキュラムに求められるニーズを見極める糸口となった。
特に20~30代の受講候補者が本事業で開発しているプログラムへの学習意欲が高いことが興味深い。時代のニーズにあった調理師を養成するカリキュラムを作成するうえで、若年層から支持を得られたことは大変重要な結果であった。
本プログラムの学習ターゲットとなる人すべてのニーズに対応するカリキュラムを考えることは、その人の置かれている立場とも深く関連するものであることが、明らかとなった。また、地域住民の食に期待する事が明らかとなり、食をもって地域の課題を解決するために役立つカリキュラムをつくることの必要性も明らかとなった。
今後は、ここから得られた知見を広く踏まえ、引き続き、プログラムの強化に活用する。

実証講座

(詳細は事業成果報告書 53~112ページを参照)

実証講座を終えて

カリキュラム編成に当たって、調理師養成課程の在学生向けに展開する授業としてふさわしい科目群、学習形態開発のための検証として実証講座を行った。
実証講座は、概ね本校専門調理師学科2年生を対象とした。
既存科目の授業とは違う視点の講座に学生がどのように反応を示すか、という点に期待と不安があったが、興味深く楽しく受講している様子が確認された。

講座の構成、教材

地域を健康、食資源、情報の3分野に分けて学習する構成は、分野に設定した科目の見直しは必要であるが学習の柱とすることが望ましい。
学習形式としては、講義+実習や講義+グループワークでの学びやすさや理解度の高さから、学びの方法としてとても有効的であるということが分かった。
実証講座で使用した教材は、講師自ら作成したものが多く、生きた教材ではあるが、汎用性の難しさを感じる。

講座内容

本実証では全40コマの講座に26の学習目標を設け、講座を受講した学生を定量的に評価することができた。
事業最終年度は学習対象者にすべてのカリキュラムを受講させ、検証を行うことを目的としたため、講座の実施日程が密になり、講座の連動性の確保が難しく、結果として学習目的が理解しにくくなったことが課題としてあげられる。
しかし、講師を本校職員だけでなく、学習目標に合わせて外部の様々な講師に依頼したことで、より世の中のニーズに近い学習ができた。
アンケートから「地域と情報」分野の科目は、理解度が「地域健康」「地域食資源」分野の科目と比べると低く、学習内容の見直しが必要であると考えられる。

今後の課題

今後、カリキュラムを強化・維持していくために、調理師養成課程の在学生向け授業として展開する際、既存のカリキュラムの設定科目で学んだ内容と結び付けてとらえることができるよう更なる工夫が必要であることが分かった。
また、学習対象者を栄養士、調理師、製菓衛生師など、食関連の資格取得を目指す大学生、専門学生、および学び直しを必要とする飲食業務従事者や、食を通じて社会貢献を考える社会人へ展開する場合は、学習状況に違いがあるためコースや段階で区分するなど、必要な科目のみを学習できる構成を検討する必要があることも分かった。

eラーニング

(詳細は事業成果報告書 113~117ページを参照)

eラーニング開発

開発の目的

本事業で開発したカリキュラムをeラーニングへ展開することで、本校の学生で受講できなかった者へのフォローや遠隔地や県外にいる受講生に対し、ユビキタスな環境で新たな学習機会を提供することができると考えた。
また、本学の教員の講義や実習のみならず、学外から招聘した講師による貴重な講演を蓄積し、長期的に知識資源を有効活用できる手段の構築により、事業終了後も他の専門学校や様々な機関での実践や、社会人等に対してのスキルアップや再教育に資する機会の提供といった活用方法を企図できることから、eラーニングの開発を本事業の計画に取り入れた。

事業3年間の成果

事業3年間の成果

3年間の開発から浮かび上がる課題

2018、2019年度のサイト構築で、実証講座当日の映像をコンテンツに組み込んだが、90分のビデオ映像の視聴は長すぎるという評価が多かった。
また、調理技術を伴う授業ではeラーニングそのものを実習授業として利用(代替え)することは難しいと感じた。
1コマ90分授業と同等の学習時間や内容を確保するために、eラーニングの仕組みや内容(授業のフォロー用か、貴重な講演等の蓄積なのか、或いは短期利用なのか長期利用するのかといった利用目的を明確にした制作)を検討する必要がある。
また、受講しやすい映像の制作(的確な長さ、適度な音量、読みやすい文字、飽きない展開)や授業で使用する教材を学外にもオープンにする場合のコンテンツ内容(特に著作権処理)に注意を払う必要がある。

開発のまとめと今後の展開

本事業で実施した基礎調査の結果や実証講座の検証により、開発したカリキュラムについては、講義や実習、オンデマンドなど、様々な学習形態の必要性が感じられることが分かった。
そこで、今後の波及効果として、本校での教育課程への組み込みや、他の専門学校や社会人の学び直しのプログラムとして発展させた際に、eラーニングを事前学習や振り返り学習として活用することでより理解度の向上が期待できるのではないかと考え、今年度開発をしたキャリアアセスメントテストをeラーニングに展開させることで3年間の開発を終了とした。
今後、eラーニングの運営方法や展開する内容については、先の課題でも挙げている通り、引き続きさらなる検討や検証を行う必要がある。
また、2020年度に実施をした校内運用に向けた職員研修において、パソコン操作に対して苦手意識を感じている職員も、コロナ禍における遠隔授業の必要性や利便性を感じ、前向きに研修に取り組んでいる様子が伺えた。
このことから、将来的な活用を見据えて、今後も継続的な研修会の実施やeラーニングに適した教材の開発を企図していきたいと思う。
さらに構築したシステムを効率的に運用するために、職員に限らず学生の理解を高める情報リテラシー教育にも取り組んでいきたい。

事業総括

(詳細は事業成果報告書 118~119ページを参照)

3年間の事業のまとめ

「食のソムリエ」育成プログラムの開発について

調理師が地域産業の中核的人材として積極的に地域創生に関わっていくために、既存の調理師養成カリキュラムにどのような要素を加えていくべきか、というテーマに対して、向き合い、掘り下げてゆく過程は、私たち食分野の職業人を養成する現場に携わる者にとって、大変貴重な体験となった。

このテーマで、まずは校内の職員同士がディスカッションを行った。
それを基にニーズ調査の項目を検討し、調査結果を吟味する。
また、外部委員を招いての開発会議などで開発中のプログラムを説明し意見を聴取する。
その内容をさらに職員内で検討する。
実証講座の企画、実施、検証をする。これらを繰り返す中で、「地域食資源」「健康」「情報」という3つのキーワードが、新しく開発するプログラムの骨組みとして確固たるものとなっていった。
既存のカリキュラム、既存のテキストでは、これらのキーワードを、実感として、また時々刻々変化する社会の流れとして、体系的に教えていくことは難しいと考える。
この3つの要素をカリキュラムに落とし込んで授業展開していくことで、これにより育成された調理師は、いかなる土地で調理師の職に就いたとしても、その地域の実情に合わせた仕事をすることが可能となり、地域産業の発展に貢献する「食のソムリエ」としてのスキルを活かしていくことができる。
さらに、「地域食資源」「健康」「情報」の要素は、調理師に限らず食を通して社会にかかわる仕事や活動をする際に、共通して学び、自らの活動に結び付けることで、その活動を豊かに、現実に即したものに発展させる要素であることを確信している。
提案するカリキュラムのシラバスや授業展開は、現時点、当該地域、調理師養成、という焦点を絞ったものになっているが、プログラムの骨組みは、時代や地域、職種を超えて、有効に活用できるものと考える。言い換えれば、この骨組みを軸に、時代の流れ、地域差、職種の特徴に合わせて、カリキュラムの詳細項目は常に見直され、ブラッシュアップして多方面で活用されるべきものであると考えている。

地域の教育力について

教育界では、地域の教育力の活用や地域の教育力の向上についての研究や議論が盛んに行われるようになって久しいが、この度の事業への取り組みを通じて、地域の教育力について考えさせられることが多かった。

そのひとつは、改めて地域について学んでゆく中で、地域文化資源というべき、地域独特の風土に合わせた食と暮らし、楽しく豊かに生き抜く知恵、産業を生み出し発展させる力強さ、そのものに教えられ、励まされ、育てられ、また誇りに感じることが多数あったことである。
もうひとつは、本事業を通じて出会った人々から伝わってくる力である。
3年間を通して、さまざまな分野で「食」や「地域」と関わって第一線で活躍される講師を多数招いて実証講座を行った。
講師の中には、教えるという現場に立つことが初めてであったり、学生とのかかわりにとまどう場面があったりしたが、授業の依頼や打ち合わせ、振り返りを通して総じて感じたことは、「伝えたいこと」「伝えたいという思い」を持っている方が、地域にはたくさん存在する、ということである。
そしてそのエネルギーは、学生たちにしっかりと伝授されたと確信している。
このプログラムの強みは、こうした潜在する地域の教育力を有効に活用し、それを受け取った学生が地域のことを本気で考え始め、地域に貢献していく、という双方向の活性化の道筋をカリキュラムとして成立させるプログラムであることである。

今後の展開

カリキュラム研究の継続

次年度より、つくば栄養医療調理製菓専門学校の調理師養成課程2年制の教育課程について、本カリキュラムの全てを2年次に履修できるように編成し、修了時に「食のソムリエ」認定を行う。
さらに、ヒアリングやアンケート調査等の方法で認定者の就業後の効果検証を行い、検証結果をカリキュラム編成にフィードバックする。
また、継続研究について、調理技術教育学会における事例研究の発表等を通して、広く意見を収集し、汎用性のあるものに育てていく。

調理師養成課程におけるカリキュラムの活用

今回カリキュラム開発にあたって協力を得た、晃陽看護栄養専門学校、気仙沼リアス調理専門学校においては、事業の成果を踏まえた授業を構想している。
次年度が開校2年目となる気仙沼リアス調理専門学校では、2年次の開講科目として「食の地域学」という科目を設ける。地域で活躍する方々を講師に招聘し、水産業を中心とする気仙沼の豊かな食資源と食文化を、実体験と共に学ぶ授業を計画中である。
これらの取り組みや効果についても、積極的に公開し、成果を広めていく。

社会人の学び直しの機会としての再編成

本プログラムは、すでに調理師や栄養士として現場で就業している人、食に携わる活動をしている人、食を通じて豊かに生活をデザインしていきたいと考える人に対しても有効であると考える。
ただし、履修方法や、履修条件については、対象に合わせて再編成する必要がある。
今後はその可能性と実用性について模索していきたい。
また、地域や大学等と連携し、生涯学習講座、リカレント学習講座として活用していくことも検討する。

食のソムリエ地域連携センター(仮称)の設置

本事業を通じてつながりを得た行政機関、研究機関、講師や委員に迎えた方々、農業生産者等との、連携の継続、研究継続や成果の公表の役割等を果たす機関として、校内に連携窓口を設置することを構想している。