効果普及想定地域

茨城県つくば市・牛久市・阿見町

  • 茨城県は、全国と比較して脳血管疾患、糖尿病などの生活習慣病による死亡率が高い状況にあり、県民の食塩摂取量は、全国平均より多く、目標量を大幅に超えている。
  • 本事業の対象とするつくば市・牛久市・阿見町は、人口10万人に当たりの生活習慣病での死亡者数が、454人(43位)、415.4人(42位)、530.3人(34位)と県内でも低い位置にあるが、死亡者数の全国平均394.5人(2006年度社会・人口統計体系 都道府県データ 社会生活統計指標 )を大幅に上回っており、急ぎ対策が必要となる典型的な地域であるといえる。
  • 一方で、これら3つの自治体は行政界が隣接しているものの、つくば市と牛久市が2020年までは人口増となっているが、阿見町では減少傾向となっている。
  • また、つくば市は筑波研究学園都市を中心とした研究機関等の三次産業が多く、牛久市は都心のベッドタウン化が進む一方で、中心市街地が空洞化し、阿見町は製薬会社等の立地による工業の占める割合が高いが、労働力人口における高齢化率が高くなっているなど、人口動態や産業構造の面で、それぞれが共通すると同時に、特徴的な地方都市の構造的課題を抱えている。
  • 茨城県は県南と県北・県央とではその人口動態と経済状況が大きく異なっており、特に県南が東京圏との結び付きが強いこと、その地域性から当該エリアでの地域課題の解決に資するカリキュラム開発は、プロトタイプとして全国(特に都市圏や都市圏のベッドタウン)の他地域にも横展開が可能となる。

当該教育カリキュラム・プログラムが必要な背景について

  • 茨城県では、食育基本法に基づき、平成19 年3月に「茨城県食育推進計画」を策定し、「食育を通じて生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育む」を基本理念として、食育に関する様々な施策を展開している。しかしながら、肥満や生活習慣病,高齢者の低栄養などの課題が依然として残されており、野菜の摂取量の減少や20 歳代を中心とした若い世代の食事の偏りなどの新たな課題も発生し、これまでの成果や社会情勢の変化等を踏まえ、平成28年3月に「茨城県食育推進計画(第三次)」を策定している。
  • 多くの疾病の原因ともなる、県民の食塩摂取量は、全国平均より多く、目標量を大幅に超えている。また、幼児や児童生徒についても、全体の約7割が目標量を超える状況にある。茨城県の健康課題である循環器疾患を予防するためには、高血圧になってから減塩するのではなく、子どもの頃から、うす味に慣れる「適塩」を続けることが重要となっている。また、茨城県は、全国有数の野菜の産地で、身近に野菜が豊富にあるにも関わらず、県民1人あたりの野菜の摂取量は目標量を下回っており、野菜の摂取量は年々減少している。肥満については、子どもから60 歳代まで、ほぼ全ての年代で、肥満者の割合が全国平均より高い状況にある。
  • こうしたことから発生する生活習慣病について、茨城県では、全国と比較して脳血管疾患、糖尿病などの生活習慣病による死亡率が高い状況にある。メタボリックシンドロームについては、女性は減少しているが、男性は横ばいで、40歳~74歳の男性の約4割が該当者または予備群という状況にある。
  • このように生活習慣から発生する疾病を減らすことが大きな地域的課題であり、医療による治療行為の前に、日常の食習慣から改善することが肝要となっているのである。
  • ところが、生活習慣病の予防や改善を実践しない理由については、農林水産省消費・安全局の「食育に関する意識調査報告書」(平成30年3月)によれば、「面倒だから取り組まない」を挙げた人の割合が46.7%、「病気の自覚症状がない」を挙げた人の割合が33.9%、「生活習慣を改善する時間的ゆとりがない」を挙げた人の割合が29.4%の順となっている。したがって、個人の食生活を改善していくためには、本人における正しい食生活に対する理解と取り組むが姿勢が重要になると同時に、個人の食生活を取り巻く状況を因子分解して把握することも必要になると考えられる。
  • 具体的には、地勢、気候・風土、習慣、歴史、行事・風習、自然環境、人口・就労状況、地域とのつながり、人づき合いといった「地域の特性」、社会環境の変化などに影響される「仕事と生活リズム」、食べ方、栄養、食品、味覚(好み)といった「個人(家)の食習慣」、そして昨今増加しているインスタグラムでの料理の露出度に表されるように、ICTを活用した新たな「食」を通じたコミュニケーションの活発化など「地域の交流」といった因子について整理し、それらの相関を分析する必要がある。
    死亡率
  • 本事業で対象とするつくば市・牛久市・阿見町は県南に位置し、その立地から東京圏との結びつきが強い人口動態と典型的なベッドタウン化が進んでいる。
  • その結果、人口10万人に当たりの生活習慣病での死亡者数は全国平均を上回るなど、都市型の食生活が健康に影響を与えていることが想定されているおり、当該地域で本事業を実施することで、その成果を県内のみならず同様の都市型エリアに展開するプロトタイプを策定することが可能となる。
  • また、波及効果を高めるために、対象とする連携自治体とカリキュラムの試行やその成果を共有するとともに、コミュニケーションの活発化を促進することを企図して、カリキュラム開発会議等において、具体的な場を設定し、意思疎通の促進と実効性の向上に努めることとする。合わせて学会等での発表、ウェブなどによる情報発信などを行い、さらに広域的な横展開を企図する。

求められる人材の背景

  • 我が国は少子高齢社会の時代を迎え、生活習慣病や要介護者の増加に伴い高医療費が国民の大きな負担となる中、保健医療における栄養改善や疾病の予防と治療の役割はさらに重要となり、栄養士・管理栄養士の専門職としての責任と果たすべき役割はこれまで以上に重要になっている。
  • 地域における栄養・食生活や食育に関わる活動は、健康日本21(第2次)においても喫緊の課題であるといえる。そこで、それぞれの地域特性やニーズに合った成果を創出するためには、地域の養成施設の果たす役割は非常に重要となっている。

地域における人的資源・技術的資源の状況

  • 地域における健康づくりや栄養・食生活の改善のための重要な役割を担う行政栄養士数は、平成24年度で5,877人となっており、この10年間で約2,000人増加している。 特に、市町村の増加が著しく、全国の配置率は84.7%となっており、人口規模別にみると3万以上ではほぼ100%になっている。
  • 地域住民の生活習慣病の発症予防、重症化予防の徹底を図るためには、保健、医療、福祉、介護等、様々な領域での栄養・食生活支援の充実を図っていく必要がある。また、地域の医療や福祉、介護の質の向上を図る観点から、管内の医療機関や子ども又は高齢者が入所・利用する施設等の管理栄養士・栄養士の活動状況を通して、それぞれの領域において専門職種の技能の向上が必要とされる場合は、職能団体等と調整し、その資質の向上を図ることも、重要な役割となる。管理栄養士・栄養士養成施設数及び入学定員数の変化は、平成24年度の管理栄養士養成施設数は131施設(入学定員1万220人)、栄養士養成施設は172施設(入学定員1万2,050人)となっている。
  • 一方で茨城県では、平成24年度管理栄養士・栄養士養成施設数について、管理栄養士・栄養士養成施設数(人口100万対)は、全国平均303箇所(2.37箇所)に対して、茨城県7箇所(2.36箇所)で、全国で26位となっている。管理栄養士・栄養士養成施設の入学定員(人口10万対)は、全国平均22,270人(17.4人)に対して、茨城県は410人(13.92人)全国で4位となっている。
  • その他、家庭における子ども・保護者等への健全な食習慣の確立、学校等における子どもの健全な食生活実践、地域における生活習慣病予防等、生産者と消費者の交流促進などの活動をしている食生活改善推進員については、現在、全国で9番目に多い4,741人だが、会員の高齢化等に伴い、年々減少傾向にあるため、会員の養成や組織育成の支援等をする必要がある。

不足する新たな人材

  • 医食同源のコンセプトのもと、個人の主体的な日常の食に対する取組みをより高めていくためには、従来から活躍している管理栄養士・栄養士や、食の健康や交流及び食育の推進に関するボランティアなどの育成に加えて、食の「栄養」や「嗜好」についての適正な情報管理に基づくレシピを開発し、家庭や職場など地域のあらゆるところで、「交流」を活発化して、楽しい「食」と「健康」をトータルでマネジメントできる人材=「食のソムリエ」の育成が求められているのである。
    不足する人材

専修学校における人材育成の可能性

  • 管理栄養士・栄養士等の専門職は増加しているものの、地域の食資源をマネジメントして、地域の特質を生かし健康増進に資するスキルと知識を体系的に有する人材は不足しており、そうした分野について、産学官民の多様なアクターと連携して専修学校こそが切り拓くべきである。
  • 全国の専修学校では、栄養士養成に加えて、調理師や製菓衛生師など地域の人々に最前線で食を提供する飲食業従事者を数多く輩出している。彼らには通常栄養士が配置されないホテル、レストラン、菓子店、パン店においても、身近な「まち」の「食のソムリエ」としての役割が期待できる。
  • しかしながら、専修学校の特質として、「最短期間」で「資格取得をめざす」といった合理性から、必修科目の消化に終始しがちとなる側面があり、従前のカリキュラムに頼ったままでは、広い視野や柔軟な思考を身につけ、先の3つの能力を得る機会に乏しいと言える。
  • 一方で、専修学校は地域産業や地域住民の生活に密接にかかわる人材育成を通じて、地元企業や行政との接点も持ちやすいという側面を有しており、産官学民の連携において要の役割を果たすことができる。
  • これらのことから、専修学校で学んだ生徒が「地域」に目を向け、「地域」の実状に合わせて自分の専門性を活かし地域の活性化に貢献するという新しい視点を習得できるカリキュラムを、専修学校の教育システムに合わせて創造していくことは、「食のソムリエ」育成のひとつの道筋であり、地域産業の中核的人材育成に資するものと考える。